【まどみちおさんの詩「ぞうさん」の話】
ぞうさん ぞうさん おはなが ながいのね そうよ かあさんも ながいのよ ―『まど・みちお詩集 ぞうさん』 所収詩「ぞうさん」より あれ?これって子どもの歌でしょ? 子どもが歌う歌じゃないですか。 編者はかつて、まどさんにそう尋ねたものでした。するとまどさんのお返事はこうでした。 「これはね、象の子どもが、森の仲間たち、ライオンや熊やリスたちから 『やーい、きみの鼻は長くておかしいや』とからかわれたのです。 すると象の子どもは、そうだよ、ぼくの大好きな母さんの鼻だって長いんだもん、 といって自分の長い鼻を空にかかげて自慢した。という歌なんです」 つまりこの歌は、象の子どもが、自分が自分に生まれてきて嬉しい、という「存在の詩」なのですね。 ぼくたちや子どもたちが、人生の早くに、 自分はいったい誰だろう?どこから来たのだろう? なんの用事があるのだろう?と悩むとき、 自分が自分に生まれてきてよかった、と知ることができたらどんなに幸せでしょう! この詩はやはり、ただの童謡ではありません。 あえて歌わず声に出して読んでみれば、深い深い現代詩であることがわかります。 (2013年に編集長の田中がブログに書いた文章を再掲しました)まど・みちお詩集 ぞうさん - 童話屋 (dowa-ya.co.jp)