2025.06.12

編集者からのメッセージ「重爺が好きだ!」

新刊の絵本『にんげんばかり そばを たべるのは ずるいよ』は、「森は海の恋人」運動で知られる畠山重篤さんの孫の凪くんが文を書き、重篤さんがエッセイを寄せています。重篤さんは2025年4月3日に亡くなられました。本書の最終校正刷りを見届けてから旅立たれました。本書は重篤さんがさいごいに文章を寄せた書籍となりましたが、「最新メッセージ」でもあると思います。

本書のあとがきとして、童話屋編集長の田中和雄が書いた文章を紹介します。

          ◇

畠山重篤さんが肺を患って亡くなった。81歳だった。親しい人たちは重篤さんを重爺と呼ぶ。ぼくより8歳年下だった。葬儀の折「駄目じゃないか、ぼくより先に死んでは……」と重爺を叱った。

重爺はいつも笑顔だった。その笑顔に遭った人はみんな幸福(しあわせ)になり、重爺を好きになった。実際、重爺は幸福だった。その幸福が彼の人格であり、存在そのものだった。

幸福は人格なのだ。機嫌が良いこと、ていねいなこと、親切なこと、寛大なこと、など幸福は常に外に、表情に現われる。歌わない詩人というものは真の詩人でないごとく、真の幸福は外に現われる。

この幸福な詩人が書いた一行の詩「森は海の恋人」は、かつてガガーリンが見つけた「青い地球」の真実に符合する。……日本は森の国 海の国。森は繁り3万5千の川は毛細血管のよう。四方を海に囲まれた山に木を植えれば川は歌い田を潤し、肥沃な海は海藻が群れ、貝も魚も無尽蔵。山海の光合成で温暖化は解消。礼を知り他を慈しんで青い地球は永遠の花園だから、「日本は大丈夫!」……と重爺から聞いたぼくは、思わずヒザマヅイタ!

日本だけでなく、世界も大丈夫なのだ!

童話屋 田中和雄

(写真は2024年6月2日の植樹祭にて、重篤さんと長く親交のある気仙沼在住の藤野茂康さんが撮影されたものです)